【親が倒れる前に】介護認定申請の『前』に息子が済ませておくべき6つの事前準備

私は今年で47歳になります。15年ほど在宅で鍼灸マッサージの仕事をしていて、日々たくさんの高齢者やそのご家族と接しています。そして実を言うと、私自身も他人事ではありません。80代になる両親が、まだ介護認定を受けないまま二人で暮らしています。

仕事柄、現場のリアルは人一倍見てきたはずなのに、いざ自分の親のこととなると、「まだ大丈夫だろう」という気持ちが先に立ってしまう。それが正直なところです。

特に、離れて暮らす親を持つ40代・50代の方の多くは、「何かあってから動く」しかできず、必要な情報にたどり着けないまま慌ただしく日々が過ぎていきます。

私も含めて、この世代は仕事では責任のある立場を任されることが増え、家庭ではまだ手のかかる子どもがいる、という多忙を極める世代です。自分の家庭のことだけで精一杯で、遠く離れた親の将来のことまで考える余裕がないのは、決して恥ずかしいことでも珍しいことでもありません。

だからこそ「気づいた時にはもう手遅れで、仕事を休んで駆けずり回る」という事態を避けるために、まだ何も起きていない今のうちにできることだけを少しずつ押さえておくことが大切だと、私は現場で感じてきました。

仕事を休んで駆けずり回る程度で済めば、まだいい方かもしれません。働き盛りの世代が、準備不足のまま突然の介護に直面し、仕事そのものを手放さざるを得なくなるケースは、決して他人事ではないのです。

厚生労働省の調査では、2021年の1年間だけで「介護・看護」を理由に離職した人は約9万5千人にのぼるとされています。

結論から言うと、介護認定を受ける前の「親が元気に暮らしている今」こそ、準備を始める最適なタイミングです。

理由は簡単で、いざ親が倒れてから介護認定を申請しても、実際にサービスを使えるようになるまでには数週間〜1ヶ月以上の時間がかかり、慌てて動いても初動のパニックを防げないからです。これは在宅の現場で何度も目にしてきた光景です。

ここでは、仕事や子育てで忙しい毎日の中でも無理なく始められる「6つの事前準備」を、現場の視点から紹介します。私自身、まだ全部できているわけではありませんが、少しずつ進めているところです。

1. 地域包括支援センターの連絡先をスマホに登録しておく

お住まいの自治体ごとに設置されている「地域包括支援センター」は、高齢者の介護・医療・福祉に関するあらゆる相談を無料で受け付けている総合窓口です。

担当エリアは自治体のWebサイトですぐに調べられます。いざ親が倒れた時に検索する時間すら惜しいので、親御さんの住所を管轄するセンターの電話番号を、スマートフォンの連絡先に登録しておくだけでも安心感が全く違います。

私も、自分の親の地域を管轄するセンターの番号を先日ようやくスマホに入れました。仕事や子育てで忙しい方こそ、こうした「調べる手間を先に消しておく」準備が後々効いてきます。

2. 親の医療・服薬情報を一箇所にまとめておく

  • かかりつけ医(病院名・担当医)
  • 服用中の薬(お薬手帳)
  • 過去の病歴(既往歴)

これらは、救急搬送時や病院での問診時に必ず聞かれる情報です。離れて暮らしていると把握できていないことも多く、いざという時に家族が実家で診察券やお薬手帳をガサガサ探すことになります。

現場でも、ご家族がこの情報を把握できていないために初動が遅れる場面を何度も見てきました。実家に帰省したタイミングで、お薬手帳や診察券の写真を撮ってスマホに保存しておくだけで、有事の初動スピードが劇的に上がります。

3. 「介護認定」の仕組みとスケジュール感だけ知っておく

制度の詳細を今すぐ暗記する必要は一切ありません。ただ、以下の「大枠のスケジュール感」だけ頭に入れておいてください。

  • 申請資格: 介護保険は原則65歳から申請可能
  • 所要期間: 申請から認定結果が出るまで「約1ヶ月」かかる
  • 立ち合い: 認定調査には家族の立ち会いが推奨される

「倒れたら翌日からヘルパーさんが来てくれる」と思っている方が多いのですが、現実は申請から決定までタイムラグがあります。この「1ヶ月の空白期間」があることを知っておくだけで、いざという時の心構えと動き方が変わります。

4. 兄弟姉妹と「もしも」の時の連絡ルールを話しておく

介護が本格化してからお金や分担の話し合いを始めると、お互いに余裕がなくなり感情的な対立が起きやすくなります。まだ親が元気な今のうちに、お盆や年末年始の集まりなどのタイミングで軽く話をしておくのがおすすめです。

  • 一次対応: 万が一の時、誰が窓口になるか
  • 重要物の管理: 実家の鍵や通帳の保管場所
  • 役割分担: お互いの家庭の状況で、どこまで動けそうか

私自身、弟が一人いますが、お互いに子どものいる家庭を抱えているので、「どちらかに全部任せる」というわけにはいきません。まだ話し合いの途中ですが、こういう話は先延ばしにするほど切り出しにくくなるものだと感じています。特にそれぞれが自分の家庭を抱えている場合、「誰がどこまで動けるか」を事前に共有しておくだけで、いざという時の不公平感や心理的負担を大きく減らせます。

5. 親自身に「エンディングノート」を書いてもらう

エンディングノートとは、本人の医療・介護に関する希望や、資産・連絡先などの情報を書き留めておくノートのことです。

法的効力はありませんが、「延命治療についてどう考えているか」「もしもの時に誰に連絡してほしいか」といった、家族だけでは判断に迷う重大な意思を残しておける点に大きな価値があります。

注意点として、いきなり「エンディングノート書いて」と渡すと「縁起でもない」「まだボケてない」と拒絶されることがあります。

「何かあった時に困らせたくないから、分かるところだけでもメモしておいてもらえると助かる」と、自分のために書いてほしいというスタンスで伝えるとハードルが下が下がります。書店や自治体の窓口で無料配布されているもので十分です。

6. 「頼れる外部サービスや仕組み」を1つでも知っておく

親の介護を、家族の犠牲や根性だけで抱え込む必要は全くありません。地域包括支援センターのほか、自治体の介護相談窓口、さらには民間が提供する「見守りサービス」など、頼れる選択肢は年々増えています。

介護認定が必要になる手前の段階で最も困るのが、「離れて暮らしているため、親の衰えや異変に気づけない」ことです。

最近では、親のプライバシーを侵害せずに遠隔で見守れるサービス(電気の使用状況で安否確認できるサービスや、スマホ操作不要のテレビ型見守りなど)も充実しています。

「まだ介護保険を使うほどではないけれど、少し心配だな」という時期からこうした民間サービスを1つ知っておくだけで、日々の漠然とした不安が和らぎ、自分自身の生活や仕事を守ることにも繋がります。

まとめ:まだ何も起きていない「今」だからこそできること

  • 地域包括支援センターの電話番号をスマホに登録
  • お薬手帳や診察券を写真で保存
  • 認定完了まで「約1ヶ月かかる」と知っておく
  • 兄弟姉妹と連絡ルールを共有しておく
  • 親の意思を残すエンディングノートを用意
  • 見守りサービスなど頼れる選択肢を知っておく

親が倒れてからパニックの中で調べるのと、落ち着いている今あらかじめ15分で準備しておくのとでは、将来の負担は雲泥の差になります。最悪の場合、それが介護離職という取り返しのつかない選択につながることもあります。

仕事や子育てで忙しい毎日だからこそ、まずはスマートフォンで親の地域の「地域包括支援センター」を検索し、電話番号を登録することから始めてみてください。私も、今日それを済ませたところです。

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